名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

エトランゼのすべて

タイトル:エトランゼのすべて(小説:星海社)
作者  :もりたきせつ:森田季節
絵師  :庭
デザイン:?
編集  :?

京都観察会なる奇妙なサークルに入った大学新入生の日常を綴る青春小説。
一般層でも手を取りやすい作りになってますが、作中何枚か挿入されるイラストはすべてカラーなので庭さんのファンにもおすすめしたいですね。

充実した学生生活を送ろうと模索する大学性の青春模様を題材にしたライトノベルだと 「ゴールデンタイム」あたりが思い浮かびますが、ゴールデンタイムでの大学生活描写が『動』ならば、こちらの作品は『静』という対極の存在になってますので、ぜひ両者を読み比べてみてください。
キャラ造形がある意味リアルで、とんがってはいませんがじわじわ来る、いぶし銀的なおすすめ青春小説です。

京大に合格し、憧れの大学生活がスタートするもうまくスタートを飾れず焦っていた針塚圭介。そんなある日、自分の個人情報を的中させていくミステリアスな女性の雰囲気に飲まれ、気がつけば京都観察会なる妙なサークルに入ることになる……。

このサークル、基本的にたいした活動をしてないので、もっぱら針塚と他のちょっと変わったサークルメンバー達との関わりを描きつつ、しだいに会長は一体何者なのか?という謎に迫っていくことになるのですが……中盤くらいまでは前哨戦です。こういう些細な変化を追っていく話もなかなかどうして悪くない、んですがまあ後半が本番ですね。

ほんとは後半についていろいろ書きたい!
が、これはもう直接読んでもらうのが一番でしょう。大学生活に憧れを抱いていたものの、理想とは違うどうにもならないもどかしさ。時間は過ぎ、これといった成果もなく、彼女も出来ないまま日は過ぎていく。そんな焦燥感と、相反する静かさ、そこからのスイッチ感がお見事!
キャラもそれぞれ個性的ですが、ラノベ的な「こんなやついねえよ!」ではなく、いかにもどこかにいそうな変わり者ってところがポイント。ああラブリー中道さん。


この作品の名台詞

「針塚君って、元気な人よりもとらえどころのない変わった人のほうがタイプなんですか?」
「恥ずかしながらまともにデートしたことがないんで、恋愛自体がミステリーなんです」

→解説


「何が『友達百人できるかな』だ。そんなに友達がいる人間がまともなわけがない。人のことを真剣に気遣っていたわってあげられる人が、百人も相手にできるわけないだろ! せいぜい、数人が関の山だ。人間は地球の裏側だろうと、近所のスーパーだろうと、いつだって異邦人(エトランゼ)なんだ! 人を傷つけないようにして、自分ばかりが傷つく、こんな僕らのほうがはるかに正しいんだ! カラオケ行ったり合コンしたり人生に不安も感じずに楽しんでいる連中がバグってるんだ! お前ら、全員敵だ!」

→解説


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from お亀納豆のライトノベルまっしぐら on 月曜, 2012/04/30 - 16:53

著:森田 季節 イラスト:庭 「何が『友達百人できるかな』だ。そんなに友達がいる人間がまともなわけがない。人のことを真剣に気遣っていたわってあげられる人が、百人も相手にで...