名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

どうせ私は狐の子

タイトル:どうせ私は狐の子(小説:ティー・オーエンタテイメント)
作者  :もりたきせつ:森田季節
絵師  :藤ちょこ
デザイン:?
編集  :?

一言で表せば怪異譚、なんですが……
なんともまあ独特な雰囲気を持った作品です。読後感もどこかふわふわ。まさに狐につままれたような気分になるでしょう。
しかしながら、森田季節ならではの文章表現が今回も冴え渡ってます。親との関係がまっとうではない小学生の少女の繊細な心の内を映し出す様はおみごと。
怪異譚だとは言いましたが、ほろ苦い青春小説が好きな方ならきっと楽しめると思いますよ! おすすめ。

小学5年生になる少女・大鳥樟葉は、ある日突然『自分は人じゃないのかもしれない』病を患う。それから間もなく、母親である志乃が失踪する。そして母が狐だったという父親の謎の発言。樟葉の症状もだんだんひどくなる。そんな樟葉のもとに、謎めいた少女が現れて……

ファンタジーとは違い、あっさり母親や樟葉が実は狐でした、という流れにならないところがポイントですね。
私たち読者はわけのわからないまま、とにかく読み進めるしかない。
どう話が転がっていくのかは……ご自身の目でお確かめを。
樟葉の独白部分はほんとうにいいんで、名台詞として挙げておきます。


この作品の名台詞

親のことを照れもしないで好きだって言う子供は、将来ろくな大人にならない。あるいは大人になる前に死んでしまう。すぐ近くにいる敵に気づいていないことになるからだ。
一方、親のことを正面から大嫌いだと言う子供は、死ぬまで苦労することになる。そんなことをしたら、「親子は仲良くあるべきだ」という見えない圧力に押しつぶされてしまう。
わたしたち子供は仲のいい親子のふりをして戦い続けるしかない。そうして、体の中にある子供の部分が大人に置き換わるまで、時間を稼ぐのだ。

→解説


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