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不動カリンは一切動ぜず

タイトル:不動カリンは一切動ぜず(小説:ハヤカワ文庫JA)
作者  :もりたきせつ:森田季節
絵師  :?
デザイン:?
編集  :?

え、あれ、どういうことなの!?

まず最初の設定からしてちょっと目を惹きます。
HRVというウイルスによって、性交渉=ウイルス感染による死の危険のため御法度となりすべての子供が人工授精によって生まれ、掌に埋め込まれたノードによって思念で情報や意思を通じ合うそんな未来の物語なんですが……
不自由な環境にも負けず二人の少女が絆を深める青春小説だとばっかり思っていたら、「ええええええええ」ということになってます。でもこれは一度体感してほしい。たぶん読んだ後の評価はかなり割れそうではありますが、おすすめ。

人工授精が普通で、わざわざ人のお腹から生まれてきた子供は腹子と呼ばれ奇異の目で見られる、そんな当初のSF的な設定を背景にしつつ、不動火輪と滝口兎譚がお互いの絆を深めていく物語……だと思ったんです最初は。
ところが少女の絆という軸が中心なのは間違いないんですが、途中で宗教団体なクローズアップされたり、竜を見たという目撃情報が出たり、思念を監視する国家の仕組み、などなどかなり予想外の方向に話は転がっていき……

SFはSFでも「サイエンス」ではなく「センス・オブ・ワンダー」の方ですね。もうちょっと各要素をとことんまで突き詰めた作品を読んでみたい気もしますが、おおいに楽しませてもらいました。ほんと、これだけ予想外に話が進んでおいて最後はすごく綺麗にまとめてみせるあたりがいいですね!


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from monumenta librorum on 日曜, 2011/01/02 - 10:54

全ての子どもが人工授精で誕生し、手のひらに埋め込まれたノードで情報や思念を交換する世界の話。主人公の少女達がある事件を調査することによって、大きな陰謀と家庭の事情に巻き...