名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

ともだち同盟

タイトル:ともだち同盟(小説:角川書店)
作者  :もりたきせつ:森田季節
絵師  :?
デザイン:?
編集  :?

「ベネズエラ・ビター・マイ・スイート」という非常に特徴のある青春小説でデビューした森田季節の新作が、一般文芸のハードカバーから出たのですが……

これがもう、読んでる途中で鳥肌の立ってくるようなかなりダークで、それでいて一級の青春小説でした。すばらしいです、文句なしに赤枠おすすめで。

高校生の細川千里、大神弥刀、芝宮朝日の三人は、ある誓いを立て「ともだち同盟」を結んでともだちになった。しかし上手く行っているように見えた三人の関係は、朝日が弥刀に告白をしたことから崩れはじめる……。

とまあ、触りだけ書くといかにも仲良しこよしの三人に思えますが、これが違います。朝日と弥刀の二人はそうでもないんですが、「魔女」を自称する千里ははっきりいって半ば人外じみていて、自称でもなんでもなく魔女としか言いようがない。
呼吸をするかのように遠慮無く弥刀も朝日も嘲笑し、哀れみ、上から目線でものを言うのですが、さりとて二人は完全に手玉にとられているのか言い返すこともできず。そして自分に近づいた者は不幸になると平然と言うような得体の知れなさを持つ存在。

そもそも三人の関係自体が、一度おかしな方向に歪みはじめてからがこの物語の本領と言えるでしょう。そこには世間の仲良し三人組の面影などどこにも存在しません。
「呪い」などという言葉が出てきたり、背筋を寒くさせるような言葉を千里は次々にたたきつけるのですが、そんなダークさを漂わせつつもかけがえのない青春の一ページをも同時に切り取っているのです。

こればっかりは実際に読んでみないとなかなかに実感することは難しいかもしれません。
ぜひこれは読んで、そして三人がどういう結末を迎えるのかを自分の目で確かめてください。

なお、装丁は非常にいい仕事をされていると思います。見事に物語の雰囲気にあっているので、この表紙にぴんと来たら買ってしまってもいいんじゃないでしょうか。


この作品の名台詞

「いいですか? 離れているほど人のつながりの価値は高くなるんです。だから、結ばれない二人の愛の物語は尊いのですよ。けれど、離れている関係は少しでも心が折れれば、簡単に暴落してしまうんです。ほんの些細なことで大神君と朝日の愛が半額近くになってしまうことだってありえるんです。どうか、どうか、気をつけて下さい」

→解説


『ウソではありません。わたしは本物の魔女です。出会った人すべてを傷つけ、絶望させる、あわれむべき存在です。だから、この手は離しません』
『芝宮さんが、わたしを気持ち悪いと思っているのは知っています。それでも魔女に近づこうとしてくれただけでもわたしはうれしいです。だから、罪を一等減じてあげましょう。あなたは将来、好きな人に最もひどい方法で振られます。そして長く長く悲しむことになります。申し訳ありませんが、これは必ず起こります。なぜならあなたは魔女に近づきすぎたからです。わたしに近づいたものは不幸になるのです。魔女とはそういうものなのです』

→解説


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