名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

六百六十円の事情

タイトル:六百六十円の事情(小説:メディアワークス文庫)
作者  :いるまひとま:入間人間
絵師  :うきあつや:宇木敦哉
デザイン:?
編集  :?

「カツ丼は作れますか?」というコミュニティの掲示板に書き込まれたトピック。
その書き込みを見た、様々な事情を抱えた人々の織りなす日常の青春群像劇。
それぞれの日常は少しずつ重なり合い、やがて一点に収束することになるんですが……
同じ群像劇でも成田良悟あたりとは、よくもまあここまでと思うくらいに作風が違うのが面白いです。
物語の展開や、まさかの着地など実にお話でした。

「カツ丼は作れますか?」のトピックを見た人は実にいろいろ。
逆ヒモ状態で定職にも就かず、いつも駅前でギターを弾いている地域では有名な彼女、ふとしたことで同級生を意識しちゃった高校生、家出を計画中の少女、ニートカップルに、老人。
そんな人々の日常は少しずつ重なって、予想もつかないラストを迎えます。各々が形は違えど青春しまくってます。
気がつけば青春小説といえばこの人、と言えるくらいの存在感を放つようになってますね作者の人は。
どの話もよかったけど、やっぱり駅前ギターねえちゃんのキャラがよすぎ!


この作品の名台詞

結局さ。結局さぁ。お題目とか哲学とか、悟りとか決断とか。
なんでもいいよ。どんな形でも、だれが与えてくれるものでもいいから。
一つでも人生の過程を認められれば、少しは前向きになれるんだよ。
人間ってそんなものね、って。
下手な鉄砲も数撃てば当たる。静よ、つまりそういうことなのだよ。
アタシの人生、思い描いたものを完全に諦めて捨てたことだけは一度としてない。叶えられたこともなんにもないっていうのが致命的だけど、どれもこれもと欲張ってどれも投げださずに、重苦しい荷物を担いでここまで歩いたり、走ったりしてきたことだけが、美徳とかろうじてすがれることなのだ。そしてこれからも、捨てずに引きずる。
「……どーよ」
主人公って、それぐらいできれば名乗っていいものなんじゃないの?
地球に山ほど、街にだって掃いて捨てるほどいる主人公たちと、肩を並べるには。

→解説


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