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僕の小規模な奇跡 (単行本)

タイトル:僕の小規模な奇跡 (単行本)(小説:アスキー・メディアワークス)
作者  :いるまひとま:入間人間
絵師  :?
デザイン:?
編集  :?

作品そのものが個人的に超ストライクだったのもありますが、なによりヒロインがまるで「化物語」の戦場ヶ原ひたぎを見ているかのようだったので(言動と心境が不一致なところが、ね)、赤枠おすすめで。いやー、おもしろかった。

入間人間作品ということで、読みにくいだろうと思って警戒している方はご安心を。
むしろ既存のどの入間作品よりも遙かに読みやすく、そして素敵な青春小説でした!
図書館において、「おすすめの恋愛小説!」とかポップをつけて置いておきたいくらいですね。
ハードカバーで、一般小説を意識した書き方になっている……はずですが、そもそもの作風が異能力ひとつ出てこない青春模様を描いているために、作者のファンにとっても違和感はゼロ。

読みかけは短編小説集かな?と思ったんですが、読み進めるにつれて全く別の物語を紡いでいたように見えた各登場人物の間がやがて繋がっていきます。

まずは、余命幾ばくもないと医者に宣告された少年が、残りの命を無駄にしないために片想いだった彼女に告白に行く話。
ここですんなり告白とはいかず、「ええええええええええ」という予想外の展開になるあたりがさすが入間人間といった感じですが、この短編はただのプロローグに過ぎません。

で、「告白美術館」以降が本編なわけですが……
主人公、ヒロインが共にすげええええええ!!!
まず主人公の、自分を格下とかなり卑下する傾向があるにもかかわらず、異様にポジティブでそのうえ人の話で全然自分を意見が左右されない究極のゴーイングマイウェイ気質。孤高を存在で、誰も寄せ付けないオーラを漂わせていたヒロインに、いともあっさり接近して、初めて面と向かって会話したその時に告白しちゃいます。邪険にされても全然めげません。なにこの人。

そしてヒロイン。
超ツンドラ。これがもう半端じゃない。その冷たさが、言葉遣いこそ違うもののもろに戦場ヶ原ひたぎを連想させるのです。
特に主人公と、ものすごーい特殊な付き合い方をするようになってからが圧巻。言葉で話していることと、心情が一致してないのがどこか透けて見えるのです。ツンドラ言動が、微妙な変化をしていくところには萌え死ぬかと思いましたよほんと。
主人公は主人公で、暦と全然性格こそ違いますが、自分を軽く見るところがあって、しかも相手を救うには全力全開なところが重なる部分がありますね。

で、こんな二人を核にしつつ、引きこもりからようやく脱出してバイトをはじめた妹の行動も平行して描いていくのですが、これが一見無関係に見えて、少しずつ少しずつ主人公との関係性が……まあここら辺はネタバレするとおもしろくないんで、各自の目で直接お確かめを。

ともあれ、ヒロインに完全に心を撃ち抜かれてしまったこともあって全力おすすめです。


この作品の名台詞

「……あなたのこと」
「あ、俺の名前は」「どうでもいいわ。話の腰折らないで」
「はい」
「で、あなたのこと。全く好きではないけれど」
「嫌いでもないとか?」
「腰折名人の称号を与えてあげるから黙りやがれ。今ね、わたしは下らない話をしようとして不快なの早く終わらせたいの。ご協力願えるかしら?」
「はぁ」
「好きじゃないけど、付き合ってもいいわ」

→解説


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from 所詮、すべては戯言なんだよ on 月曜, 2010/07/05 - 05:05

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