アリフレロ―キス・神話・Good by
作者 :なかむらくろう:中村九郎
絵師 :むらたたいち
デザイン:?
編集 :?
「黒白キューピッド」「ロクメンダイス、」と、あまりにも個性的すぎる作品を世に送り出した中村九郎作品に新たな一ページが。
はじめにいっておきますが、あいかわらずすごい勢いでかっとばしてます。”数ページ試しに読んでみる”などという消極的な姿勢だと、速攻で挫折する可能性がありますので、きっちりと確保した上で気合いを入れて読みましょう。
はっきりいって1度や2度読んだくらいでは、物語の構造やキャラクターの関係をまともに把握することは困難です。(実は私もよくわかってません)
そのため、わかりやすい作品を読みたい方は手を出さないほうが賢明です。100%大火傷しますから。
しかしありふれた王道・定型のライトノベルには物足りないものを感じている方、とにかくなんでもいいから変わったものを読みたい方は必読。意味不明ながらも、強烈な印象を残してくれることでしょう。
個人的には強烈におすすめ。一読の価値はあります。ただし、どういう感想になっても責任はとらんのでそのつもりで。
正直あらすじを紹介するのも難しいけれど、一応現代を舞台にした伝奇バトルもの。あくまでも「一応」ですが。
「左腕に神話が降ってくる」と言い、死を予言することの出来る少女・小桜冬羽に自らの死を予言されてしまった少年・三井川正人。バイト先のリサイクルショップで買い取った奇妙なDVDと巨大なバス・ケースを運ぶ途中に、謎の白メイドに襲われます。その時どうやっても開かなかったバス・ケースが開き、中から出てきたのは手斧を持った謎の少女・黒園葵。現われるなり白メイドと戦いを繰り広げますが、そんな中三井川は予言通り死んでしまい……。
えー。
序盤のあらすじを一応紹介してみましたが、正直こんなものには何の意味もないので実際読んでみるしかないでしょう。
序盤でいきなり主人公が死ぬのもアレですが、敵味方の構図も謎、恋愛に至る過程も「えっ、いつの間に!」と感じる可能性が高く、さらには生死に関わる戦いの最中でも平然とあまりにもゆるゆるな会話が交わされたりします。とにかくどれをとっても突き抜けています。
「ただの地雷じゃん」と人によっては言うかもしれません。しかしそう斬って捨てられないだけの魅力があちこちにちりばめられているんですよね……。
圧倒的にわかりにくいなりに、ロクメンダイスと比較してさらなる飛躍をしています。ちょっと今日のところは用意できてませんが、独特の言語感覚を台詞紹介で補完したいなと思います。たぶんそれを見てもらったほうが感覚が掴めそうな気が。
ところでタイトルも副題は読んで納得したんですが、「アリフレロ」って結局なんだったんだろう。謎は深まるばかりでございます。
なにはともあれ、あえておすすめ。嗚呼まるで麻薬のごとき中毒性。
この作品の名台詞
「クランチ、それじゃ、わたしがこれをクランチにあげよう」
町野は気づいている。クランチはもう、半分死んでいた。町野が涙に霞む目で、ポケットから一生懸命に探したソレ。町野は、クランチの大きな手のひらに載せる。
「どういうこと……なに? 町野? 何も……ない……ぞ?」
「それは、心の綺麗な人にしか見えない宝物だもの」
クランチは二度瞬きした。
それからクランチは、初めてもらったプレゼントを抱えるように、ソレを抱きしめた。
「おれは、何を返せば、いいんだろうか……」
「黒園……黒園、がんばってね」
「あん?」
「わたし、応援するし……」
何事もなかった木曜日に下校するみたいな足どりである。
「黒園……黒園、黒園……ねぇねぇ、黒園」
「なんだよ、聞こえてるってば」
「ほんとにがんばって、わたし黒園の味方だよ。損得勘定とかじゃなくて、仲間……」
「ウソつけ、自分の命がかかってるからじゃん」
談笑しながら、彼女たちは下校していく。
「黒園、わたしたち、仲間?」
「あぁ、仲間だ」
「でも……二人だけの秘密にしようね? ひとには、ナイショだよ? 絶対ナイショね?」
「あたしの仲間だと恥ずかしいのかよ、嫌なのか!」
不思議なことに、淀んでいるはずの空気や、工場からの騒音は、どこか遠い。
黒園葵が現われると、劇場の照明が落ちたようにムードが変わる。けしてそれは厳粛なものではなく、「ありふれてしまえ」とこの世のすべてを笑うように……。
黒園が笑えば、何もかもが、ありふれる。
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「心の汚れた俺のこと、許してくれ、小桜……」 「三井川、なぜ? なぜ、バイトしてる姿を見られると、興奮するの?」」 「な……どこで気づいた? やめろ、やめてくれ、病原菌を...
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