名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

カッティング ~Case of Tomoe~

タイトル:カッティング ~Case of Tomoe~(小説:HJ文庫)
作者  :はねだだいすけ:翅田大介
絵師  :も
デザイン:?
編集  :?

鬱系というか、精神的にどこか爆弾を抱えた者同士のボーイミーツガールな恋愛ストーリー(とあえて定義します)
実際には純粋なサイコ・サスペンスとかではなくSFの要素が入り込んでいるんですが、作品の根幹を壊すものではありません。
形は違えど、傷ついた者同士が肩を寄せ合って立ち上がろうとするので、最後まで鬱というわけではないのでご安心を。
ただ、描写的に典型的な中二病的な痛さは頻出するので、その手の作品が苦手な人には向いてないかも。

さて、この巻ですが前作とは主人公もヒロインも別。
幼い頃に親に棄てられ、親戚のところに引き取って育てられたために自分を無価値だと思っている少年・紅条ケイイチロウと、彼のクラスに転校してきた謎の少女・紅条トモエが主役です。なお、SF的な部分について触れるとネタバレするんでそこは伏せておきます。
なお前作と世界観は共通していて、一部両方に登場してくる人物もいますがその辺は実際に読んでお確かめください。
痛いけど、いい物語でした。ああ青春だなあ。


この作品の名台詞

「……傷を嘗め合うような関係になる。傷を癒すことなんて、一生できない。むしろ傷付けあうことしかできない。そんな関係、惨めなだけよ」
「傷を舐め合うことは、本当に惨めな事なのか? 誰だって傷を抱えてる。喪失を抱えて生きている。この世の誰もが、その傷と喪失を埋めようと四苦八苦して生きている。けどそれは、傷を舐め合うのとどう違うんだ? むしろ、まったく同じ事なんじゃないのか? だって結局傷は埋まりっこないんだから」
そうだ。結局、そういうことなのだ。
傷は埋まらない。
傷は癒えない。
傷は傷であり続ける。
その事に掛けてなら、僕は第一人者だ。十二年も掛けて実践してきたんだから。
「舐め合い結構。もう一度言いなおすぞ?
僕に君を――紅条トモエを愛させて欲しい。君の傷みも苦しみも憎しみも、全部欲しい。いまだ僕を憎んでいるのなら、それでもいい。その憎しみさえも、僕にくれ。そんな関係が惨めで最低だって言うなら――むしろこの世の中こそがくそったれだ。僕が言いたいのはそれだけだ」

→解説


「――一つだけ言っておくわ。
兄さん、きっと後悔するわよ」
「多分そうだろうな」
「……兄さんは馬鹿よ」
「知ってる」
「……とでもなく不器用」
「……一番性質の悪い女泣かしだわ」
「それははじめて聞いた」

「ばか」
「……そうだな」

→解説


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