名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

ベン・トー ― サバの味噌煮290円

タイトル:ベン・トー ― サバの味噌煮290円(小説:スーパーダッシュ文庫)
作者  :あさうら:アサウラ
絵師  :柴乃櫂人
デザイン:?
編集  :?

すべてのバカ小説スキー、及び今後化けるかもしれない作者の人を押えておきたい方へ。理屈はいい。読んで感じるんだ!!
赤枠で激おすすめの「描写の無駄遣い」が炸裂する、弁当争奪戦です。

売れ残って、半額シールを貼られる弁当を命をかけて奪い合う者達の戦いの記録です。
とにかく無駄に熱いです。火傷しそうなくらいに熱い!
やってることはくだらないんですが、細かい描写の端々が光ってます。
文章に疾走感……というよりは暴走感?がありますね。
文章表現を見ていると、内容がバカなだけでは終わらない可能性を感じます。ひょっとすると今後さらにもう一枚化けてくる可能性が……そういう意味も込めて、ぜひぜひ読んでみてください。あちこちにさりげなくネタを散りばめつつも、半額弁当を巡っての体と体のぶつかり合う死闘が素晴らしい!

いやー、前二作がガンアクションだったんで今回もミリタリーネタがあるかと思ったんですが、そっち系のネタはすっぱり捨てて新境地で来ましたね。
今後もこの作者には注目していきたいですええ。


この作品の名台詞

「弱きは叩く――」
「――豚は――」
「――潰す」
「それが――」
「――この領域の掟だ」

→解説


僕は、駆ける。太宰治作『走れメロス』、その主人公メロスのように持てる力の全てを出し切り、走る、走る。友ではなく、ボロボロになった制服のためというのが哀しくてならない。
風を切る肩が寒い。裸だからだ。心が寒い。裸だからだ。懐が寒い。仕送りが少ないせいだ。僕の股間のモノが左右に揺れている。トランクスだからだ。ブリーフは嫌いだからだ。間違っても純白ブリーフ砂漠仕様への再染色技術継承者にはなりたくなかったからだ。
僕は、駆ける。走ることしか知らない、走ることだけが人生の全てであると猛進するマラソンランナーのように走る、走る。
走り出してすぐに感じた足の重さや呼吸の苦しさがなくなっていく。ランナーズハイだ。顔がにやけてくる、テンションが天井知らずに上がっていく。エンドルフィンの過剰分泌による陶酔状態だ。ドラッグ大好きな連中はどうかしている。ただ走ればこんなにいい気分になれるのに、お金と人生を無駄にしてなんと愚かなことか。自分は愚か家族まで不幸になる。僕は比較的不幸、ということは親父は中毒者なのか? あながち否定できないが……なんだか意識が遠のいていく気がする。もうすぐ神の領域に踏み込むからだ。体が軽い、ふわふわとしてくる。僕は神に等しき存在となるからだ。
なぜ駆けるのか。そこに道があるからだ、走るのをやめる時、即ち僕が死ぬ時だ、何故なら僕は神に等しき存在であるとともに史上最高のアス……いや、違う。制服だ、制服を救うために走っているのだ。

→解説


「所詮俺たちが獲得せんとするのは半額弁当でしかない。真っ当な人間からすれば見窄らしい行為だろう。無様だと嘲笑う者もいるだろう。
しかし、だからこそ、俺たちは誇りを持ってここにいる。見窄らしい行為だからこそ、誇りを持って全力でこれに当たる。たとえ如何なるものであれ、人が一生懸命に頑張っているものを非難する権利は誰にもない。
それにな、誰しもに負けると思われている勝負を覆す。それが……楽しいんだよ」

→解説


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