名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

ボイス坂 〜あたし、たぶん声優向いてない〜

タイトル:ボイス坂 〜あたし、たぶん声優向いてない〜(小説:スーパーダッシュ文庫)
作者  :たかとおるい:高遠るい
絵師  :?
デザイン:?
編集  :?

プロの声優を目指して奮闘する一人の少女の物語。

読んでぞくっときました。
美少女声優の出てくるラノベはちらほらありますが、デビュー前の悪戦苦闘の段階をきちんと書いたものはあまりない、はず。もうそこだけで評価に値しますが、さらにその描写が……ほんとにすばらしかった! 赤枠オススメです。

最初にこの作品に興味を持ったのは、スーパーダッシュ文庫の新刊情報からでした。新作らしいタイトルをなにげに眺めていたら、高遠るいの名前が、挿絵ではなく作者の方にあるじゃないですか! 自分も愛読してた『CYNTHIA_THE_MISSION』とかで名前を知っている漫画家が、自分の連載中の漫画を自身でノベライズした。これはもう読んでみるしかあるまい、そう思って読んでみたわけですが……

連載中の漫画を一切知らず、予備知識もない状態で読んだ結果として、独立したひとつの作品としておすすめします。

熱烈なアニメ・声優ファンとしてオタク道を突き進んでいた女子高生・藤林沙絵は、親友で同じく声優アニメファンである千歌子に乗せられて、動画サイトに『歌ってみた』動画を投稿しはじめたことがきっかけで、見ることではなく何かを表現する自分を見てもらうことに喜びを感じるようになり、声優になろうと志す。
やがて周りの反対を押し切り、声優の専門学校へ進み、そこで現実の壁にぶち当たる……。

動画サイトで褒められて舞い上がり、私って超すごくね?と感じ、越えられない壁などないように思い始め、やがてもっと圧倒的な才能を見せつけられて絶望する。ここら辺の描写が、読んでてもう痛いのなんの。なんかもう正視できないくらいきついです。
しかしそこで終わらないのが、沙絵という少女の非凡さ……って……え、これほんとにどうにかなるの? ボロボロじゃん!
その答えはぜひともこの作品に実際に触れて答えを知って欲しいと思います。クライマックスの部分は鳥肌立ちました。

こんだけおもしろい作品なんですが、なにしろ本業が漫画家のうえに同名タイトルを執筆中なので、続きは無理だろうな……と思っていたら、あとがきを見るに、売れさえすれば可能性はあるらしい! うおおおおお、読みてええええええ! ……でも、先生働きすぎには気をつけてくださいね、マジで。


この作品の名台詞

ーー千人の屍の上に、一人の成功者が生まれる世界。
今、目の前にいるこの人たちは、これからも、"選ばれた一人"を間近で見ながら、一緒に仕事をしてゆくのだろう。
くやしいけれど、恨みはすまいーー勝手にするがいい。
でも、ただじゃ帰らない。
このあたしが、九百九十九人の代表としてーー
一番大好きだった夢に裏切られた凡人たちの代表としてーー
あんたたちを三分だけーー……
あたしの、観客にしてやる。

→解説


――そうだ。声優に、なりかたったんだ、なるために生きてきたんだ、あたしは。
だったら――、
「なればいいじゃん……声優」

→解説


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