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ストレンジボイス

タイトル:ストレンジボイス(小説:ガガガ文庫)
作者  :えなみみつのり:江波光則
絵師  :李玖
デザイン:?
編集  :?

これは……
一言で表現するなら『マイナス』の青春小説です。
最初から最後まで、すっきりするような展開はありません。
三人の問題児を軸に進みますが、なにしろ重い。
いじめとか、いじめによるトラウマとか、復讐とか、腰巾着の反乱とか、とにかくもう明るくなれるような要素が何一つない!
では、それならそれで復讐だぜヒャッハー!とかそういうわかりやすい展開にもならず。
だというのに、先の展開はすごく気になるそんなお話。

上に挙げたような話に耐性があるのならおすすめです。

とある高校。凄惨ないじめを受けて不登校になっていた遼介が卒業式にやってくるらしい。
首謀者であった日々希のいじめは常軌を逸していたが、その話を聞いて日々希はまだ足りないとでも言うように戻ってきたらいじめる気満々。
そんないじめには加わらず、かといって止めもしない傍観者に徹していた水穂は、先生に頼まれ遼介に届け物を持って行くが、そこで見たのは日々希を殺したいとひたすら憎み、復讐するために筋トレを積み、見違えるような体になっていた遼介だった……。

ここまで書いた時点では、プラスではないにしろそう逸脱してはいません。でも途中で「……え?」という展開になっていきます。水葉が異常なまでに他人の情報を収集する強迫観念に駆られていることや、日々希が遼介のいじめに参加した際の一切の手加減を忘れたキレぶり、日々希に心身を文字通り壊され、彼にこだわりすぎて考え方がゆがんでしまっている遼介。

三者三様、いずれも歪んだまま物語は進んでいくのですが着地がちょっと予想外でした。
うおう、こう来ましたか。
ほんとにマイナスな青春模様だなあ。
最初から最後まで救われないけど、時にはそういう話もまたよいものです。


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