名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

さよならピアノソナタ 3

タイトル:さよならピアノソナタ 3(小説:電撃文庫)
作者  :すぎいひかる:杉井光
絵師  :うえだりょう:植田亮
デザイン:?
編集  :?

思わず音楽を聴いてしまいたくなる、音楽が絆で結ばれあった仲間の青春小説。
クラシックやロックに造詣が深ければより作品に同調できますが、音楽知識皆無でも思わず夢中になって呼んでしまうだけのパワーを持ったシリーズです。
本気でイメージCDとか出ませんかねえ……これ。学園小説、青春小説としておすすめです。

天才ピアノ少女と呼ばれながら突如表舞台から姿を消した少女・蛯沢真冬。
その少女と思わぬ場所で邂逅した少年・ナオは、お互いのコミュにケーションにしょちゅう躓きながらも、お互いになくてはならない存在として絆を深めていきます。

3巻は文化祭!
高校ならではの学祭にかける狂熱ぶりが伝わってきます。
そして真冬の前に現れた天才ヴァイオリニストであり、親交もあった少年ユーリの登場でナオの心中は穏やかならざるものに。自分の気持ちに鈍すぎるナオもようやく自分の心に向き合えるのか!?

これまでにいい加減信頼関係を築いてきたはずなのに、絶望的に鈍い上に自分に自信が持てないため空回りしまくるナオを見ていると、読んでるこっちがじれったくてしょうがないですが、それだけにここ一番での行動には『しっかりやれー!』と思わず熱が入ります。
真冬はまだ素直になりきれない部分もあるけど、もう完全にデレモードですねえ……

あと、相変わらず神楽坂先輩の策士っぷりが際だってます(笑)
策士だけど、ほんと面倒見のいい先輩……なんですが、ナオのことをどのくらい本気で想っているのかは今ひとつ謎。どうなんでしょうね、実際のところ。

それにしても相変わらず、聞こえないはずの音楽が聞こえてくるような臨場感があります。圧巻。この描写を楽しむことだけでも作品を読む価値はあります!


この作品の名台詞

「『好き』って、つらい――よね?」
「え? ……あ、ああ……うん」
「『きらい』は、楽なんだけど。離れればいいだけだから。『好き』は、つらいよ。距離はゼロより小さくならないもんね。どうしていいのか、わからない」
「距離が……ゼロ?」
「そう。だって、お互いに大事なことなんにも言わないで――気持ちも全然伝わってないのに、最初からずうっとそばにいて。だから。
だから、それ以上近づけなくて、どうしようもなくて、つらい」

→解説


「評論家ってのは、DJだと思うんだ」
「作曲家が曲を作って、演奏家がそれを演る。DJはそれを切り貼りして、つないで、いじくって、重ねて、全然べつのものを創り上げる。ジュリアンは、知らなかっただろ? こんな音楽があるってこと。評論家も同じなんだ」
「評論て、文芸なんだよ。どんだけ学者面したって、要するに文章読ませて愉しませてお金もらってるんだ。ぼくらは――」
「ぼくらは、音楽家のつくったものをネタにして、切り貼りして、つないで、いじくって、ほめそやして、こき下ろして、面白い文章を作る。それは、たぶんジュリアンの知らなかった音楽。でも、そこにリスペクトがなきゃ、書けない」
「少なくとも、ぼくはそう。あるいはリスペクトもなしに、レコードを踏みつけるみたいにして書いてるやつもいるのかもしれない。そんなのは消えてしまえばいいと思う。そんなの、読めばわかる。言葉ならいくらでも嘘がつけると思うかもしれないけど、そうじゃない」

→解説


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