名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

本日の名台詞

「だから、ぼくは探偵になることを選んだ」
「わからないかい? すでに死んでしまったもの、失われてしまったものに対してなにか意味のある仕事が為せる職業は、この世の中でたった二つしかないんだ。つまり作家と探偵だ。作家だけがそれを夢の中でよみがえらせることができる。探偵だけがそれを墓の中から掘り返して情報に還元することができる。それは宗教家にも政治家にも葬儀屋にも消防士にもできないことなんだ」
「でもね、ときおり不安になる。探偵はつまるところ、すでに失われたものに対してしか働きかけられないのではないか、と。起きていない事件は解決できない。まだできていない墓は暴けない。これから深く傷つくはずの人がいても、ぼくはけっきょくそれに対して無力なままなんじゃないか、とね」


タイトル:神様のメモ帳(小説:電撃文庫)
作者  :すぎいひかる:杉井光
絵師  :岸田メル
デザイン:?
編集  :?
キャラ :アリス (65 P)



 ▼本日の作品&台詞解説▼

語り手である高校生(ニート予備軍)と、ニート探偵アリスと、路地裏のラーメン屋に集うニート達の物語。
ちょっとほろ苦く痛い部分がありますが、全体的には前向きな話です。おすすめです。
なお、作中におけるニートの定義は必ずしもマスコミが広げまくったネガティブイメージとイコールではありません。

それでは台詞解説。
台詞そのものが実に印象的だったので取り上げてみたんですが、こういう台詞が出てくる背景として世界のあらゆる不幸な出来事に対してアリス自身が無力感を感じ、それでもなにかできることがあるんじゃないかと思っている、そういう感情があります。