本日の名台詞別館・ほしのこえ全台詞集・オリジナル版


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声優版をデフォルトとして作成しました。注意事項などは声優版を参照のこと。


世界、っていう言葉がある。
私は中学の頃まで、世界っていうのはケイタイの電波が届く場所なんだって漠然と思っていた。
でも、どうしてだろう。私のケイタイはだれにも届かない。

■(ケイタイでどこかにかけている)
もしもし ねえ、誰かいないの?
わたし、どこまで行けばいいの?
わたし さみしいんだよ?
ノボルくん?
……家に、帰るね。

■(家に入った後)
ツーツーツー(電話の切れた音)
ねえ… 私はどこにいるの?
ああ…… そうか……

■宇宙
わたしはもう、あの世界にはいないんだ。


■(中学生活)
ミカコ「ね、ノボルくん待って!」
ノボル「長峰!」
ノボル「長峰はどうだった? 期末試験」
ミカコ「長峰はバッチリだったよ、期末試験」
ノボル「じゃあ一緒の高校……」
ミカコ「行けるかなっ! …………あ ――きっと」


■(帰宅途中)
ミカコ「ノボルくん見て! ――宇宙船がいる」
ノボル「ああ コスモノート・リシテア号だね、国連軍の。
この街からも出たのかなあ 選抜メンバーが」
ミカコ「うん…」
ノボル「あの船 太陽系の外まで行くんだって」
ミカコ「うん…」
ノボル「火星を襲った宇宙人を追うっていう話だよな」
ミカコ「うん……」
ノボル「タルシス人ってさあ どこから来たんだろうね」
ミカコ「うん…」
ノボル「長峰? 興味ないの?」
ミカコ「いや……うん…… ……ちょっと」
ノボル「――まあ コンビニ寄ってこうよ」
ミカコ「うん…」


ミカコ「どこで食べる?」
ノボル「バス停に行こうか」


■雨のバス停
ノボル「長峰、高校でも剣道やるの?」
ミカコ「うーん、どうしようかなー。ノボルくんは?」
ノボル「うん、オレはやるよ。長峰も続けなよ、強いんだから」
ミカコ「そんなこと言ってー。ほんとはわたしと同じ部活に入りたいんでしょ?」
ノボル「おまえ、なに言ってんだよ……(以下談笑)」

ノボル「帰ろうか、そろそろ」
ミカコ「うん。雨、上がったね」

ミカコ「ねえ、見て、空!」
ミカコ「トレーサーだ…」
ノボル「トレーサーだ…」(ハモる)
ミカコ「きれいだね…」
ノボル「うん……」
ミカコ「ねえ、ノボルくん…。わたしね… あれに乗るんだ……」


■2047年 4月火星
…ん!
見つけた!
当たって!


ノボルくん、火星ではずーっと演習でした
わたし、これでも選抜メンバーだからね。けっこう成績よかったのよ。
オリンポス山も見たし、マリネルス峡谷も見たし、火星観光もバッチリ!
もちろん、タルシス遺跡にも行ったよ。
教科書の写真では何度も見た景色なんだけど、実物を見ても何だか信じられない思い……
ほんとうに、太陽系は人間だけのものじゃなかったんだーって。
2039年の調査隊はここでタルシス人に全滅させられて、今度はわたしたちが彼らから得たテクノロジーで彼らを追うんだ。
リシテア号の生活にも慣れたよ。
火星で惑星圏演習をやった後、木星まで来て、今はエウロパの中継基地で一休み。
木星の雲は眺めていて飽きないよ。
イオと木星の間のフラックスチューブもすごいの。
太陽系で一番大きな雷。

■ケイタイを手に
届くかなあ……

■地上(ノボル)
長峰からだ……
長峰美加子は中学の頃に割と仲のよかったクラスメイトだ。
同じ高校にいけるって、まあ期待もしていたんだけど。
長峰は今、木星にいるそうだ。
中学3年の夏、国連宇宙軍の選抜メンバーに選ばれた長峰は、
その冬、1000人以上からなる大船団で、タルシアン調査の旅に出発した。
そう言えば長峰は割りと成績もよかったし、運動も出来たような気がするけど、
それにしても国連軍だよ。
なんだか、バカみたいな話だ……

■ミカコ
いよいよ木星を出発、リシテア号はこの後冥王星のずっと先まで行くよ。
くわしい行き先は内緒みたい。
メールが届くまで段々時間がかかるようになるけど、一番はじっこのオールトの雲からだって半年くらいのもんだからね。
ノボル「20世紀のエアメイルみたいなものだよ。
うん、だいじょーぶ。――――なにが、大丈夫なんだ……」


■地上(ノボル)
こんなふうに僕の高校の一学期はミカコとのメールのやりとりのうちに過ぎた…。

『ただいまメールはお預かりしていません』
ミカコが地球から離れるにつれ、メールのやり取りにかかる時間は開いていく。
『ただいまメールはお預かり――』
ただ、ミカコからのメールを待つだけの自分になってしまう……


■2047年8月 冥王星軌道付近
ノボルくん、わたしはいま太陽系最果ての冥王星にいます。
地球を出発してからもう半年、リシテア艦隊は木星からずっと調査を続けてきたんだけど
結局タルシアンの痕跡はまだ、どこにも見つかっていないの。
ノボルくん…… でもわたしはホントはね、このまま何も見つからないで、早く地球に帰れるのがイチバンいいなって
ミカコ「ん、なに!?」


『直線軌道上、距離2万にタルシアン確認』
『第1から第4トレーサー隊、発進準備』



敵、ホントに!?  わたしも出る!


■戦闘
ふう……
ん!?

■敵編隊
あっ!
(聞き取り不明)

■遭遇
なに!?
ん……
きゃっ!!


はあっ はあっ はあっ はあっ…… 
『距離12万にタルシアンの群体を確認』
『全艦、1光年のハイパードライブを行い離脱する』
『トレーサー各機、至急帰還せよ』

ノボルくんと一年もずれちゃう……
いま、メール…… あ!
くっ!
『2号機、至急帰還せよ』

こいつを落とさないと…… 間に合わないよ!
戻らなくちゃ!


『全艦、ワープアウト』
『これより48時間後 本艦隊はヘリオスフェア・ショートカットアンカーを経由し シリウスα・β星系への長距離ワープを行う』
『飛翔距離は8.6光年』
『帰りのショートカット・アンカーはまだ発見されていない』
『全員、地球への連絡をすませておけ』




■ワープ後
『新規メール作成
件名:みかこだよ☆
宛先:寺尾昇(noboru_t@xdsl.ntt.jp...)
ごめんね。
ねえ、私たちは、宇宙と地上にひきさかれる、恋人みたいだね。
このメールが無事にノボルくんに届くといいな。
                 長峰美加子』
このメールがノボルくんに届くまで、一年……
シリウスからは片道8年だよ
ノボルくん? わたしのこと……忘れちゃうかな……



■2048年8月(ノボル)
季節が一回りして、また夏が来た。
ミカコからのメールを待つのをやめたのは、去年の冬だ。
結局、もう一年もミカコからメールは届いていない。

ミカコからだ……
一年ぶりのメールだ!

『みかこだよ☆
差出人:長峰美加子(mikako@jcom...)
受信日時:48.08.20.3:20pm 送信日時:47.08.04.4:46am
ねえねえ、ノボルくん!
ひさしぶり!
ミカコだよ、
ねえ1年ぶりのノボルくん、元気?
私のこと忘れてない?


メールがすごくすごく遅くなっちゃったね、ごめんね。
えーと、今でもまだドキドキしてるんだけど…
どうやって説明すればいいのかな、リシテア号はね、今さっき1光年の距離をワープしたところなの。
私にとっては1年なんて全然たっていないんだよ。私はまだ15歳なんだよ。
ノボルくんにとっては1年前、私にとってはつい30分前、冥王星の近くでね、』

リシテア号はこれから……
リシテア号はこれからね、長距離ワープに入るの
目的地は8.6光年先のシリウス
このメールがつく頃には 私はもうシリウスにいるよ!
お互いのメールが届くまでこれからは8年7ヶ月かかることになっちゃう……
ごめんね。


ミカコ「ねえ、私たちは、宇宙と地上にひきさかれる、恋人みたいだね」
ノボル「                  ひきさかれる、恋人みたいだね」(ハモる)



■ノボル
ぼくたちは中学の頃からずっと、たぶん、お互いだけを見てた。
でも、光の速さで8年かかる距離なんて、永遠ていうのと何も変わらない。
ぼくと、ミカコとの時間はどんどんずれていく。
だからぼくは、目標をたてた。
もっともっと 心を固く冷たく強くすること。
絶対に開かないとわかっている扉を、いつまでも叩いたりしないこと。
オレは、一人でも大人になること。



■2047年8月 シリウスα・β星系
シリウスが惑星系を持っていることは、 前世紀からわかっていたことだけど、
他の星系を肉眼で見たのは私たちが人類初だ。
シリウス星系第4惑星アガルタ。
アガルタは、空も雲も海も、地球によく似ている。
でも、やっぱり全然違うって思う。

時間も距離も、どんどんノボルくんから離れていく。


『第1調査隊から第12調査隊まで、タルシアンの痕跡は発見できず』

■アガルタ内の調査中
わあ……
雨に、当たりたいな……
コンビニ行って、一緒にアイス食べたい……
ノボルくん…… うっ ひっくひっく(嗚咽)

■送信メール内容
『新規メール作成
件名:ここにいるよ
宛先:寺尾昇(noboru_t@xdsl.ntt.jp...)
24歳になったノボルくん、こんにちは!
私は15歳のミカコだよ。

ね、私はいまでもノボルくんのこと、すごくすごく好きだよ。』

届いてっ……!


■タルシアン?
あ!

あ……わたし?

子供『ねえ、やっとここまで来たね!
大人になるには痛みも必要だけど、でもあなたたちならずっとずっと、もっと先まできっと行ける。
他の銀河へも、ほかの宇宙だって』
大人『ねえ? だからついてきてね。託したいのよ、あなたたちに』


でも、私はただノボルくんに会いたいだけなのに!
好きって、言いたいだけなのに……!(泣き声)

『大丈夫、きっとまた会えるよ!』


『アガルタ各地にタルシアン出現』
『交戦開始された』
『軌道上にもタルシアン群体出現 艦隊に接近中!』



(泣きながら)
わかんないよっ!!


■ノボル
あの夏の日、8年という月日が永遠に思えたことをよく覚えている。
それから今まで、決して迷いなく生きてきたわけではないけど、
あの日に決めた目標だけは、今も変わっていない。
僕は僕の時間を生きて、来月からは念願の艦隊勤務だ。


あ……
ミカコ…!
■ミカコからのメール
『件名:ここにいるよ
差出人:長峰美加子(mikako@jcom...)
受信日時:56.03.25.02:54pm 送信日時:47.09.16.01:35am
24歳になったノボルくん、こんにちは!
私は15歳のミカコだよ。』

■戦闘
はあはあはあ……

■ノボル
ミカコからのメールは2行だけで 後はノイズだけだった
でも、これだけでも……奇跡みたいなものだって思う


ノボル「ねえミカコ? 俺はね」
ミカコ「私はね、ノボルくん。懐かしいものがたくさんあるんだ。ここにはなんにもないんだもん。例えばね」
ノボル「例えば、夏の雲とか、冷たい雨とか、秋の風の匂いとか」
ミカコ「傘に当たる雨の音とか、春の土の柔らかさとか、夜中のコンビニの安心する感じとか」
ノボル「それからね、放課後のひんやりとした空気とか」
ミカコ「黒板消しの匂いとか」
ノボル「夜中のトラックの遠い音とか」
ミカコ「夕立のアスファルトの匂いとか…。ノボルくん、そういうものをね、私はずっと」
ノボル「ぼくはずっと、ミカコと一緒に感じていたいって思っていたよ」


艦隊が沈んでいく! リシテアを守らなきゃ!


ミカコ「ねえ、ノボルくん? わたしたちは、遠く遠く、すごくすごーく遠く離れているけど」
ノボル「でも想いが、時間や距離を越える事だって、あるかもしれない」
ミカコ「ノボルくんはそういうふうに思ったことはない?」
ノボル「もし、一瞬でもそういうことがあるなら、ぼくは何を想うだろう。ミカコは、何を想うだろう」



ミカコ「ね? 私たちの想うことはきっとひとつ」
ミカコ「 ねえ、ノボルくん?」

ミカコ「わたしはここにいるよ。」
ノボル「ぼくはここにいるよ。」(ハモる)