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ライトノベルニューウェーブチェックin京フェス2005

2005年の京フェス合宿企画「ライトノベルニューウェーブチェック」で紹介した2004年11月〜2005年9月までに発売されたライトノベル作品の中から、特に新人・もしくは最近あまり目立って活動が見られなかった既存作家に絞って、おすすめ作品を11作品選んでみました。資料作成者(極楽トンボ)の能力限界のため、少女系小説は完全にカバーしきれていませんが、そこはご容赦ください。また、この資料に関するご意見はトップページからメールフォームをご利用ください。

なお、厳選した11作品の中でも、特に私がおすすめしておきたいのは聖者の異端書です。10番目に紹介していますよ〜。

タイトル レーベル 作者 刊行数
煉獄のエスクード 富士見ファンタジア 貴子潤一郎 既刊2巻以下続刊
■あらすじ
両親を亡くし教会にひきとられ育った少年・薫。ある日彼が学校から帰ると、神父に義兄の真澄とともにある老人のもとへ連れて行かれる。そして長剣を渡され、告げられた。「今日からお前はエスクードとなるのだ」と。いきなり、途方もない運命に巻き込まれてしまった少年の成長を描く本格ファンタジー。

■おすすめ
物語の構成がすばらしい。割とファンタジー作品の王道のような展開をするのだけれども、その構成が絶妙。

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キリサキ 富士見ミステリー 田代裕彦 全1巻完結
■あらすじ
冒頭、「俺」が死んでしまい死後の世界をさまよっているところから物語は幕開けする。俺はそこで案内人と遭遇するが、そこで自分の記憶を持っていることを告げたことから、本来の寿命前に死んでしまったことが発覚。そこで生き返らせてもらうことになるのだが、俺のもともとの体にはなぜか既に他の精神が居座っていて、「俺」は内気で自殺未遂の少女・霧崎いずみとして生き返ってしまうことに。
しばらくいずみとして生活するうち、ある事件が起こる。いずみを生前から、そして復帰後もずっといじめていたクラスメイトが死んだからだ。その犯人は連続殺人犯キリサキらしい。
しかし「俺」は確信する。犯人がキリサキのはずがないと。なぜなら・・・。ミステリもしくはサスペンス。

■おすすめ
冒頭いきなり転生のような現象が起こるものの、基本的にこの物語はれっきとしたミステリで、二転三転する謎解きの経過がとてもおもしろい作品である。……正直ミステリはよけいなことを書けば書くほど興ざめする気がするので、私の下手な紹介文をこれ以上続けるのはやめ。一冊完結なので気軽に手を出しやすいこともあるし、ぜひ読んでみてもらいたい。

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奇蹟の表現 電撃 結城充考 既刊2巻以下続刊?
■あらすじ
近隣を束ねるギャングのボスとしてその名を知られていたシマ。だが、組織間の抗争で妻と子供を殺され自らも重症を負い、ほぼ全身をサイボーグ化。裏世界での抗争に嫌気のさしたシマは、サイボーグ化する際に、元の身分を捨てて偽の戸籍を手に入れ、新たな生活をはじめる。
そんなシマが選んだ職場が修道院。そこでシマはナツという少女に出会う。出会った当初、警戒心をむき出しにしていた彼女だが、他の子供がさらわれそうになったところを助けたりといった経験の中、次第にシマに打ち解けていく。そんな折り、街では子供がいなくなる事件が続出。修道院でも例外ではなく、どうやら移植するために臓器を抜かれて殺されているらしい……。

■おすすめ
まずなによりも電撃文庫として(というよりライトノベル全体でも)、中年、しかも外見はイノシシ顔の男が主人公というのがあり得ない。ヒロインは10歳だから恋愛が成立する余地もない。シマも自分の子供と重ね合わせてるっぽい。ハードボイルドそのもので、敢えて言うと売れ線は最初から捨てているとしか思えない。
だがそれがいい。
そして肝心の内容ですが、人気を投げ捨てた設定である程度見当もつきますが、とにかく地味。確かな文章力で実に味わい深い、ふと新人であることを忘れそうになる。挿し絵も渋い(またそこがいいのですが)願わくば、続編や新シリーズが出せる程度には売れますように。

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バード・ハート・ビート ファミ通 伊東京一 全1巻完結?
■あらすじ
山岳に根づいた国家のため、巨鳥を使って通常の交通の代わりにしたことがきっかけで生まれた巨鳥に乗って山あいで速さを競う競鳥(カレラ)。これはそのカレラの国家認定と騎手を目指す少年と、謎多き少女との邂逅から幕を開ける冒険譚。

■おすすめ
とにかく飛ぶ様子が気持ちよく、航空アクションのような感覚で読めます。直球ど真ん中なボーイミーツガールストーリーをお楽しみあれ。ヒロインについてはお楽しみ、ということで。

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電波的な彼女 スーパーダッシュ 片山憲太郎 既刊3巻以下続刊
■あらすじ
ある日突然見知らぬ少女から「前世の縁」で絶対の忠誠を誓われた自称不良の柔沢ジュウ。とまどいつつ、少女・堕花雨の相手をしているうち、連続通り魔事件に遭遇したことがきっかけで犯人捜しをはじめるジュウ。果たして犯人は……

■おすすめ
まずなんといっても主人公が普通の人間であることに尽きる。ちょっと不良ぶっていて、胆力と撃たれ強さは間違いなく常人より遙かに上だが、例えば格闘無敵という存在では全くない。頭だってせいぜい人並み。いろんなことが許せない。はじめは目をそらして見ない振りをしていたとしても、結局放っておくことができない。そんな人間。
猟奇事件に徹底的に拘るあたりも「電波」の名にふさわしいかも。

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風と暁の娘
 パンツァードラグーン オルタ
MF 五代ゆう 全1巻完結
■あらすじ
同名のX-BOX用3Dシューティングゲームのノベライズ。高度な文明を誇った旧世界は、遺伝子改造を施した攻性生物と呼ばれる生物兵器の暴走により滅亡、残った人類は、人類の制御を離れたまま野生化した攻性生物の脅威に怯えながらもようやく復興を果たしつつある。帝国では再び人為的に攻性生物を創り出そうという不穏な動きが・・・。
そして帝国の辺境の街で幼いころからずっと塔の最上階に幽閉されていた少女オルタが突如飛来したワイバーンに襲われる直前、半ば伝説上の存在であった最強の攻性生物ドラゴンにより塔から救われるところから話は幕を開ける。なぜ少女はドラゴンに救われたのか? 少女に課された運命とは?

■おすすめ
ファンタジー世界を構築する実力は五代ゆうファンには今更いうまでもないことであるが、とにかく原作の重厚な世界観を見事なまでに再現したその精緻な描写がすばらしい。原作のゲームなど全く知らない状態で読んでも何ら問題なく惹き込まれる魅力がある。現に私はX-BOXユーザーでありながら、オルタをプレイしないままこの本を読み思い切り世界にハマりこんで、読んだ翌日あわててゲームを購入に走ったほどで、小説によりゲームの魅力を教えてもらった格好になる。また、運命に翻弄されるオルタの葛藤など心理描写もさすがである。
ゲームなど全く興味はなくともこの作品はおもしろい。保証する。

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薔薇のマリア スニーカー 十文字青 既刊4巻以下続刊
■あらすじ
九頭竜大骨格(レガシオス・ノ・イン)と呼ばれる巨大竜の骨が“蓋”となり、異界生物(フリークス)を封じ込めている地下空間に、財宝を求め危険を顧みず潜り込む集団がいた。クランZOO。美しくも頼りないマリアローズを筆頭に今日も万全(?)の態勢でお宝GET!?…のハズだったのに!!分断の危機、思わぬ敵との遭遇と、幾度のピンチをへてメンバーが見たものとは、旋律の魔導女王が誘う“哀しき夢”だった!?優しき《侵入者(クラッカー)》マリアと仲間たちの最高な物語、堂々開始!
(思考能力停止により、公式の紹介文転載してしまいましたごめんなさいごめんなさい……)

■おすすめ
「ウィザードリィ」というゲームをそのまま小説にしたような作品。職種の違う仲間でパーティーを組んでダンジョンに潜り宝を探し、ダンジョンでは敵と戦闘が起こり、時には死亡。死体さえ持って帰れば寺院で復活できるが失敗することもあるから、やはり死は怖い、そんな世界。主人公のマリアローズは少し屈折していて、そのうえ直接的な攻撃力ではパーティー中最弱なこともあって自分の存在価値についていつも悩んでいる。そんなマリアが少しずつ精神的に(肉体的に、ではない! ここがポイント)成長していく様が見どころ。

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円環少女 スニーカー 長谷敏司 既刊1巻以下続刊
■あらすじ
1000の魔法世界が存在する中、唯一魔法の概念がなく、その世界の住人に「観測」されるといかなる強大な魔法も存在しなかったことにされるため、他世界からは「地獄」と称されている地球。元世界の罪によって、地獄に落とされた少女メイベルは、刑罰として地球の武原仁とともに、他世界の犯罪魔導師100名を狩る責務を負う。

■おすすめ
とりあえず・・・長谷敏司久々の新作万歳!
魔法設定などをこれでもか!というぐらいに詰め込んである。例えば「周期運動するものに《魔力》を見出し、それを操る円環大系」や、「対象を定義づけることによって指定した対象に魔力を重ねられる宣名大系」などなど。
そして世界設定もさることながら、キャラクターが実にいい味だしてます。例えば「せんせ」にベタ惚れのメイゼルは、ちょいと嗜虐趣味があって委員長をいじめに走ったり、 と二人だけのサインを考えるような子供らしさがあるかと思うと、さながら小悪魔状態。敵として立ちはだかる女騎士のエレオノール・ナガンの、一途な想いとかこれ以上語るとネタバレになりそうなんで終了。

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白い花の舞い散る時間 コバルト 友桐夏 全1巻完結?
■あらすじ
塾に入会している人しか入れない掲示板がきっかけで知り合った匿名チャットで仲良しの女の子5人が、ある時4泊5日オフ会をすることに。「匿名性を保つために、オフ会でもあえて誰が誰かは名乗らないことにしましょう」と、オフ会でも匿名という条件でとある山荘で行われるのだが、そこから運命は回り始める……。

■おすすめ
正直この作品に関しては、ほとんど語りようがない。何を言ってもネタバレになる。サプライズは保証する。リリカル・ミステリとの触れ込みだが、リリカルはともかく、本書は間違いなくミステリである。どこがどう、とはこれまた言えないが。表紙絵のイメージはあてにならない!とだけ言っておく。
ネット上の感想がまたおもしろく、「意外性のある展開に驚いて」おもしろかったという意見と、「あまりの急展開に」ついていけずダメだった、と二分。これ以上はあえて語らない。ぜひみなさんが直接見て判断してほしい。少なくとも文章だけでも読む価値がある。潜在能力がある新人なのは間違いない。

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聖者の異端書 C☆NOVELS 内田響子 全1巻完結
■あらすじ
とある聖者が書き残し、異端な内容で闇に葬られた手記という体裁になっているが、最初と最後以外は手記の中心となっている、ある少女の一人称小説である。
地方領主の娘として育った「わたし」は、結婚適齢期になり他国の王子の元に嫁ぐことになったのだが、結婚式の最中、教会に落ちた雷によって王子は姿を消してしまう。その事件を目の当たりにし、どうやら魔法使いによってさらわれたらしいと知った「わたし」は、王子を捜し出す旅に出ることに・・・。

■おすすめ
最初の手記の部分がちょっとわかりにくいがまあ問題ないかと。
なんといっても、まず「わたし」(嫁ぐ女に名は必要ない、ということで名前がないのだ)の性格につきる。名もないくらいであるから、この世界の女性の身分は推察できようと言うものだが、そういう一般的女性像とはかけ離れている。基本的に内省的な性格で何かというとすぐ考え込むような部分を持っているかと思うと、王子を捜す旅に出ようとしたりここぞの行動力は男顔負け。正直あまりにもこの「わたし」が印象的すぎて、ろくにストーリーを覚えていません。でも「萌え」とは根本的に違う方向です。
癖は強いですが、新人作品とはとうてい思えない。

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ことりたちのものがたり スーパーダッシュ 空谷あかり 全1巻完結?
■あらすじ
人間が創り出した、うつくしい歌声と背中に翼を持った亜人種カナリヤ。そのカナリヤと人間との関わりを書いた短編集を数編収録。

■おすすめ内容的には極めてオーソドックスですが、文章が心地よい(あるいは綺麗)。童話調でちょっと切ない終わり方をするものもあるが、常にどこか優しさを残す。

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