名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

おすすめライトノベル古今東西   第一回   「付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います」

このところ、ライトノベル32選というのがちょっとしたブームで、あちこちのラノベサイトで思い思いのセレクションが発表されています。自分もこのブームに乗っかろうかな?とチラッと思いましたが、一度に32というのは相当に多い。ならば10個とかに限定して公開すれば済む話ですが、せっかくなので自分なりに考えた結果、こういう企画に行き着きました。発表年代関係なく、個人的におすすめしたいと思うライトノベルを(できるだけ定期的に)紹介していきます。……頑張ろう。

さて第一回は、いきなり入手困難なものを紹介するのもどうかと思い去年完結したこちらを。



付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います」

全7巻。1巻だけでも綺麗にまとまっているので、とりあえず1巻だけ読んでみて肌に合うようなら残りも制覇していただければ幸いです。

『アンティーク』と呼ばれる、特殊な能力を持った骨董品。そのアンティークを店主の都和子が買い付ける過程で掴まされた偽物を扱う付喪堂。そこでバイトをしている、とある経緯で片眼が限定的な未来視の出来る義眼の少年・刻也と、同じくここでバイト中のいつも無表情で何を考えているのかよくわからない少女・咲が主な登場人物。
いろんな「アンティーク」にまつわる話が短編形式で展開します。アンティークの能力がなんらかの形で関わってくるんですが、めでたしめでたしで終わる大団円な結末はむしろ少なく、ブラックな、あるいはほろ苦い終わりを迎えることが多いのが特徴。刻也は、義眼によって人の死に関する未来だけは予知することが出来る能力を持ち、他人の危険を放っておけず駆け回るのですが、相手を助けられないこともあるし、助けたからと言って幸せが待っているとは限らない。
最終巻の結末には、思わず唸らされてしまうことでしょう。

さて、このシリーズの特徴はもうひとつあります。ほぼ各巻四話構成なんですが、最後の四話だけは一転して、刻也と咲の二人がお互いに気がありながらも、不器用にもすれ違いまくって右往左往する話になっています。普段は無表情で何を考えているかわからない咲の心情を、最後の短編だけ咲の一人称にしてオープンにするというやり方は実に上手い。
実はこんなこと考えてました、とか言われると思わずきゅんとなりますね。


1巻 250Pより 舞野咲人は――主に刻也が――わたしのことを感情がないとか言うけれど、それは表情にうまく出ないだけで、もちろん感情はあるし、心は動いている。
例えばいきなりプレゼントを渡されて動揺する程度には。

巻が進むと、もはや不器用なだけで完全にいちゃラブの域に達してます。
もしラブの方面でもう少し突っ込んで情報が欲しい方は、「付喪堂骨董店」のタグから各巻の紹介で名台詞を参照できますので、そちらが参考になるかと思います。
ともかく最終巻が! 正直読み終えたときは言葉にならなかったですね。感動、という単純なものではないけれどこう……心にくるものが。
願わくば一人でもこの想いを共有できますように。

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