名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

リリスにおまかせ!

タイトル:リリスにおまかせ!(小説:電撃文庫)
作者  :あさみやかえで:麻宮楓
絵師  :こりえりこ:梱枝りこ
デザイン:?
編集  :?

第14回電撃大賞<最終選考作>。
まずはじめに。表紙を飾っている金髪ツインテール少女は、サタン様です。主人公のリリスじゃありません。
女の子が主人公なのに、表紙飾れないって実はかなり珍しいかも。
そしてその理由がまたおもしろかったりするんですが、その辺はとりあえず置いといて……

現世に復活したサタン様と使い魔リリスが、着実に、しかし気づかれぬように魔力を貯めるために『小さな悪』をこつこつ積み重ねる話。
……いや、それだけじゃないんですけどね? まず設定の肝は何よりもそこだと思うんで。
爆笑と言うよりは、ニヤニヤしながら読む感じだったけど、なかなかおもしろかったのでおすすめしときます。

賞味期限の近い商品を奥にして、新しい商品を前に出すなどあまりにも地味な悪をしているサタン様。趣味はクソゲー。
そして使い魔であるリリスはそんなサタンの世話係兼護衛なのですが、これがまたサタン様全肯定なので、何をみても都合良く解釈します。
すべてはサタン様の深慮遠謀です。孔明の計略と一緒です(違
あと、サタン様以外のことに全然気が回ってないので、恋愛フラグを立ててもまっっっっったくの無自覚です。これはダメだ(笑)
「人間にはできるだけ悪事を働いてほしいから、殺さないようにする」とか、なかなか上手い事設定になってるのもポイント。

実は話もそれなりにひねってあって、最後はけっこう綺麗に話が収まってます。
なるほど、そういう理由でサタン様が表紙を飾っているのか……と一瞬は思ったんですが、単に年齢が低い方がよかっただけかもしれません。


この作品の名台詞

悪魔は基本的に、世界に散らばる『悪意』を食らうことで力を得る。
人の不幸は蜜の味、という言葉があるように、怒り、憎しみ、悲しみといった負の感情が、悪魔にとっては何よりのご馳走なのだ。
この世を悪意で満たす。それがいま成すべきことなのである。だからわたしは悪事を働く。
罪を重ねれば重ねるほど、サタン様が真の意味で復活なさる日も近づくのである。
そう、今日この時点ですでにわたしの『悪』は始まっているのだ。
わたしの手には今、ゴミ袋が握られている。そのゴミ袋を、
「せい!」
ためらいもせず、かけ声と共に指定のゴミ捨て場に投げ捨てた。
周囲に人はいない。任務完了だ。
今日は燃えるゴミの日。焼却処分できるゴミを捨てる日のことである。
だがわたしが捨てたのは、燃えないゴミなのだ。
回収に来る人間の、怒りに満ちた表情がありありと思い浮かぶ。その感情がサタン様を喜ばせるとは知らず、グチの一つでもこぼすのだろう。
知らぬが仏、とはこのことだ、バカめ!

→解説


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