名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

円環少女 (8)裏切りの天秤

タイトル:円環少女 (8)裏切りの天秤(小説:スニーカー文庫)
作者  :はせさとし:長谷敏司
絵師  :みゆう:深遊
デザイン:?
編集  :?

今回は詳しい説明は省略します。個性的な文体から紡ぎ出される魔法アクションです。
どうしようもないピンチの連続。
嘘の発覚と決別。
すべてを救えないとわかりつつそれでもあがき続ける男。
とにかく絶望の先には次の絶望が待っている感じ。よくもまあ……。

主人公の武原仁という男は本来決して弱いわけじゃないんですが、周りの戦力があまりにも桁違いなので弱いとしか感じられません。
そして仁の選ぶ選択肢はどこまでも目先で、ほんのちっぽけな自分にとっての幸せを追い続ける小市民的なものばかり。
かっこよくない主人公を目にする機会も少なくはないですが、ここまで覚悟が決まらないまま当てもなく戦い続ける主役も珍しいかも。
ほんっとにひたすら泥臭く、しかも誰も幸せになれそうな気がしません。
あまりの苦戦、連戦で、1秒後には死んでてもおかしくない仁やメイゼル達。正直未来図が全く描けません。
それだけにストーリーの展開は、最初から最後までトップギアに入りっぱなしで目が離せないですね。

全くないわけじゃないですが、いつものぬるい日常編は今回ほとんど顔を出す余地がないくらいの激戦。
激戦の行き着く先は……これは言わぬが華というものでしょう。

それにしてもメイゼルの成長ぶりと、仁のむしろ退化っぷりは対照的。
これは最終的な物語の着陸点を暗示したりは……してないかな。考えすぎ?


この作品の名台詞

「ヒキョウは、簡単に見られる”過去”から目をそらしてたあんたも同じでしょ。せんせのこと、そんなふうに責められるの?」
「だって、こんな目にあったら”普通”はそうだよ!」
「普通だからそうしたって、ひどい理由ね。”普通”だから、お父さんのことぜんぶせんせのせいってことにした? ”普通”だから、いっしょにくらして、ごはんを食べられることにしがみついた? ”普通”に罪をおかして被害者ヅラなんて厚かましいのよ!」
「わたしは、メイゼルちゃんみたいに強くないよ!」
「ねえ、きずな。……弱いって言い続けたら、護ってもらえるつもり? あんた、さんざんお姉さんぶっておきながら、小学生のあたしより子どもなのよ」

→解説


「お互い、自分が命をかけるに足ると思ったものへ立ち向かうのです。何の無茶がありましょうか。人に命がけの一歩を踏み出させた愛情を、騎士たる私は守りたいのです」
「”はじまりの騎士”よ、私は、何度でも、”あなたがたがやらないこと”をしましょう。あなたがたが救わないものを救い、あなたがたが立ち止まらないものを愛しましょう」
「神意は《生命》を愛します!――それが”悪”を産むものであろうとも、愚かしい誤りをおかすものであろうともです!!」

→解説


シリーズ一覧


作品一覧


トラックバック

http://maijar.jp/?q=trackback/2705
from 愛があるから辛口批評! on 金曜, 2008/06/27 - 21:02

円環少女 (8)裏切りの天秤 (角川スニーカー文庫 153-10) 作者: 長谷敏司 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング 発売日: 2008/06/01 メディア: 文庫 「なんて個人て弱いんだろう、京香ち...