名台詞を通してはじめる読書もある。ライトノベルを中心に、作品の長所を追いかけて紹介していくサイトです。
 

零式

タイトル:零式(小説:ハヤカワ文庫JA)
作者  :うみねこざわめろん:海猫沢めろん
絵師  :?
デザイン:?
編集  :?

熱い! これは乾いた硬質な雰囲気を持ちながらも、実に熱い青春小説です。
どこにも心のやり場がなくあがき続ける少女達は、最後に何を掴むのか?

第二次大戦で国土へ原子爆弾を落とされ、帝国に敗北した神國。鎖国政策の名の下にバベルの塔じみた壁によって遮られた世界が舞台。ただ生きるだけの貧しい暮らしを強いられ、一部の人間は国粋主義者として徒党を組み始めている。一方で科学は発展し、バイクはリニアで走るのが当たり前の世にあってあえて原始駆動機(レシプロマシン)で走ることにこだわり続ける特攻少女・朔夜は今日もリニアに無謀な勝負を挑む……。
一応架空歴史ものになるのかもしれませんが、とにかく既に時代遅れとなったはずのレシプロマシンの単車で突っ走ることにこだわった話です。
エンジンにはまるっきりの素人の自分から見ても、とんでもない設定なのがわかる。でも燃える。
ちなみに作者の人は、「左巻キ式ラストリゾート」という知る人ぞ知るアレなノベライズ(にして原作者?)なのでした。

エグい描写もありますし、エンジンの描写に怒濤の枚数をつぎ込んでガチガチに硬質な雰囲気があるので人を選ぶかもしれませんが、少なくとも知らずにスルーするのはちょっともったいない作品です。


この作品の名台詞

「おかしい。まちがってる!」
「だったら何だ! 教えろよ、あたしたちに何が変えられる?」
「かえられるか……わからない。けど……わたしたちなら……きっと飛べるわ!」
「飛ぶ……?」
「そうよ、飛んで、べつのくにへいくの」
「別の国……寝惚けてんのか。ここも愛せないやつが、別の場所に行ってなにを愛する気だ。なにも変わりやしねえ――ドブのザリガニみたいに、この国を一生逃げまわれ。おまえにはそれしかできない」
「あいせばいいの? ほんと? そうすればどうにかなる?」
愛すれば――どうにかなる?
わからない――あたしにだってわからない。
「……さあね」

→解説


「翼は折れた? だからどうした。心ならここにある」
「握ってみなよ。その両手を開いて」

→解説


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from 本を読みながら日記をつけるBlog on 日曜, 2007/02/18 - 17:25

「翼は折れた?だからどうした。心ならここにある」

from monumenta librorum on 月曜, 2007/02/12 - 00:29

歴史改変物的な設定のSF。帝国統治下で、鎖国状態の神國が舞台になっていて、少女が別の少女と出会い、そこからの脱出を図る話になっている。最近は、割と、こういった設定の話が多...